World of Dionysos
Dionysosの歌詞の意味のナゾ、それはいわば彼らの真骨頂であるのかもしれないが、 これらはなんとかそのナゾに挑んだものである。深すぎてとてもじゃないが理解できない。
もともと言葉も文化も違うので、理解しようとすることすら見当違いであろう。
しかし、和訳した歌詞を並べてみるだけでも何かが見えてくるかもしれない。
彼(マシアス)のフィルターを通した世界は非現実的でありながら
どこか日常的な、いわばフランス映画に通じるものがあるのではないか?
sun is blue like ...
... eggs in winter
Ciel en Sauce
(『The Sun Is Blue Like Eggs In Winter』より)
冬の卵のように太陽は青いという、意味不明のタイトルのついたEPに入っている、彼らのスタンダードナンバー。
これもWetに劣らずさまざまなバージョンが録音されている。
この曲はwetと同様、最初に知って彼らにはまるきっかけとなった曲。
リミックスバージョンではリミックスされていない、アコースティックバージョンを聴くことができる。
オリジナル版ではリミックスされた、ショートバージョンが聴ける。
なんか逆じゃん?
オリジナルバージョンはホワイトクリスマスのメロディーで始まるのが熱い。
シングル「song for jedi」に入っているバージョンは、オリエンタルな香りが漂うBabethのコーラスが堪能できる。
Si on voit des nuages dans le ciel
c'est dieu qui se fait des pop-corn
il les fait cuir en plein soleil
Tous les dimanches apres-midi
Je me souviens tres bien de toi
tu vomissais des fleurs fanees
tous les dimanches apres-midi
tu vomissais des fleurs fanees
Des deux mains je t'apprendrai a faire
de la bicyclette par la fenetre
on fracassera les volets bleus
on siphonnera l'essence du ciel
tous les dimanches apres-midi
tous les dimanches apres-midi
Le ciel est bien trop nuageux
et tu preferes rester chez toi...
Indigestion de pop-corn Bleus
j'ai du trop regarder par la fenetre
je n'me souviens plus tres bien de toi
etais-tu CHIPS ou bien comete ?
もし空に雲が見えるなら
それはポップコーンを作った神様
彼は太陽に満ちた肌
いつもの日曜日の午後
僕は君の事をとてもよく覚えているよ
君は枯れた花を吐き出す
いつもの日曜日の午後
君は枯れた花を吐き出す
窓を通して、僕の2つの手のおかげで自転車の乗り方を覚えた
青い入り口は騒がしい
空のエキスを吸い上げてる
いつもの日曜日の午後
いつもの日曜日の午後
空はとても曇っていて
君は家にいることの方が好きみたいだ
僕はすべて窓から眺めてたよ
僕はそれ以上君の事を覚えてない
君はポテトチップだったの?それとも彗星だったの?
雲を眺めていると、色んな形で、いろんな色で、ぜんぜん飽きない。
時にはおいしそうな綿菓子に見えたり、夕焼け雲は幻想的だったり、
嵐の前のあの灰色の恐ろしい雲など、本当にさまざまな表情を持っている。
そんな雲をずーっと見ていると、吸い込まれそうな感覚になる。
誰しも経験したことがあるだろう。
特に昼下がりにボーっと雲を眺めているときはとても幸せだ。
彼はきっと空をずーっと眺めていて馬鹿になったんでしょう。
Wet
(『Happening Songs』より)
英詞であるこの作品は、彼らの最初のアルバムに、2つのバージョンが収められている。
1曲目には普通の、13曲目にはWet Folkとしてスロウなバージョンとなっている。
僕がDionysosを知った最初の2曲のうちの1つ。(もう1つはciel
en sauce)
ひねくれ系だけどストレート。
わずか2分ちょっとの長さしかないが、十分楽しめる。
最初は妙な(キーボードの?)音で始まり、うなるようなベース、ヘビーギター。
とは言ってもアコースティックがベースで、
スライドギターもあるし、決してやかましくはない。
Folkではアコースティックギターに合わせてしっとりと、クールな雰囲気で始まる。
が、最後までこの雰囲気では行かず、「良い曲」としてまとめないあたりが逆にかっこいい。
なお、sun is blue like eggs in winterではリミックスバージョンが聴ける。
これは、基本的には正式バージョン(?)のものに近いが、
よりパワフルなロックへと進化している。
My spaghetti hair
pissing on my very long nose
Like a shower of tears
a shower of beers
a shower of tears (fuck' em all!)
I was cooking my brain
under the moon, inside the gloom
and I saw all my dreams
I saw all my nightmares
jumpin' from my ear (fuck' em all!)
Ok midnight
you can spit all your fuckin' stars on me...
I'll never be wet wet wet
Loneliness seams to be colder
When you're wet!
Fight about myself
I'm always fuck by me
僕のスパゲッティーみたいな髪型
僕のチョー長い鼻にかかってうっとうしい
涙のシャワーのように
ビールのシャワーのように
涙のシャワーのように
(みんなくたばっちまえ!)
僕は脳みそを料理した
月の明かりの下で、暗闇の中で。
そして僕はあらゆる夢を見た
僕はあらゆる悪夢を見た
耳から飛んだ夢を
(みんなくたばっちまえ!)
真夜中
君はあのくそったれの不幸を僕に吐きかける
僕は決して弱気にはならない、弱気には
君が弱気なときなんか
孤独は寒そうに思える
自分自身との戦い
僕はいつだって自分でダメにしようとしているだけ
こうして見てみると、結構いいことを言っている。
歌詞に出てくる僕と君はどちらも自分自身なのだろう。
その日の天気は気分次第、自分がダメだと思ったらそれでおしまい。
それは分かってるんだけどなかなか上手くいかなくて心の中では、あるいは心とは裏腹に
世の中にくたばっちまえ!と言う自分がいる。
人間なんだからいつも良い方向だけには考えられない。
そんな悩める青年の日常の風景を上手く表現していると思う。
Song For Jedi
(『Western Sous La Neige』より)
song for jedi(ジェダイの歌)。
ジェダイとはもちろんスターウォーズのジェダイ。
曲の第一印象は、相変わらずだけど、よくこんなタイトル思いつくなぁというものだった。
だって、ジェダイの歌なんて曲を書くロックバンドなんてめったにいないぞ。
フランス語の意味は分からなかったが、「子供の頃僕はジェダイだった」っていうのは
世界の少年はみんなジェダイの騎士にあこがれてたんだってことで妙な一体感を感じた。
レーベルの意向なのか、それともプロデューサー(ニルヴァーナでお馴染みのスティーブ・アルビニ)の影響か、
とんでもない変な音は入っておらず、やや物足りないというか、聴きやすくなっている。
ちなみにマスタリング作業はSteve Rookeによって、ビートルズでお馴染みのアビーロードスタジオで行われたという、
すばらしいバックグラウンドを持つ作品なのだ。
Quand j'etais petit j'etais un jedi
tellement nerveux que lorsqu'il pleuvait
souvent je m'electrocutais.
Et j'ai rencontre une fille en forme de fee,
tellement nerveux, que lorsqu'elle griffait
mon dos, ma peau se transformait en pyrogravure
When I was a child, I was a jedi...
On s'electrocutait souvent,
lorsqu'on s'embrassait un peu trop longtemps
et encore aujourd'hui et maintenant
When I was a child, I was a jedi...
小っちゃかった頃、僕はジェダイだった
雨のときはよく自分を感電させてナーバスになってた
そして僕は妖精の女の子に出会った
ナーバスなとき、背中を引っかいたので焼き絵のようになってしまった
(コーラス)子供の頃、僕はジェダイだった(繰り返し)
僕は少し長い抱擁をすると自分を感電させていた
それは今日も今現在もなお一層そうだ
(コーラス)子供の頃、僕はジェダイだった(繰り返し)
訳があまりよくないだろうが、これで精一杯。
自分を感電させた?
ドキドキしたってことかな。
あがり症の青年の歌だと考えると簡単に筋が通る。
歌詞よりも興味を引くのは、Song for Jediのマキシシングルに収められているビデオクリップだ。
このビデオでは痛烈なアメリカに対する皮肉が込められている。
必ずしも否定的なものではなく、歴史のダイジェストを見ているようだ。
ストーリーは、ドキュメンタリータッチで大航海時代のコロンブスのアメリカ大陸発見から始まり、
大西部時代、エジソン、アポロ、ベトナムを経て、なんと最後には衝撃の結末が・・・
Bank of America Plazaの看板に続いて映し出されたのは、9・11をほうふつさせる、
小型機がビルに突っ込んだ映像なのである!
スターウォーズというアメリカの生んだ大傑作のタイトル、
その映像がアメリカの歴史。
富と反映に対する警鐘なのではないか?
いくらがんばったって彼らの歴史は3分間のダイジェストに収まるし、
結末は悲しい。
最後に、映像中でBabethが自由の女神に扮しているのは、
自由の女神像がフランスからアメリカに贈られたという歴史を意識しているんだろうか?
気がつかないところでまだまだ色々練りこまれていそうで、つくづく深いな〜と思う。
45 tours
(『俳句』より)
アルバムの一曲目に収められたこの45 tours。
Dionysosには珍しく、というか今のところはこの曲だけ、
「まとも」なのである。
それこそ欧州チャートの上位に食い込んでもおかしくないような。
まずはタイトル。
45 toursだが、toursを辞書で調べると「1週、回転、周囲、順番」と出ている。
45週?なんなんだ?
僕はレコードの時代を知らないのでピンとこなかったが、
よ〜く考えたら45回転レコードのことを言っているのではないだろうか。
そういえば曲の始めにレコードの雑音がSEとして入ってたな。
それに曲中ではグルグル回る音が速くなったり遅くなったり。
以下に書いた和訳の中にもレコードを速くまわしたり遅くまわしたりとある。
45回転レコードとはどんなものなんだろう?
調べてみると、レコードには33回転のものと45回転のものなどがあるらしい。
回転数によってLPとかSPとかいったりするらしく、
45回転は一般的にドーナツ盤といわれているもの。
あ、ちなみに回転数とは1分間にレコード盤が回る回数のこと。
Le coeur est un 45 tours raye
Ou seulement les deux pieds du batteur ont
pu etre enregistres
A force de s'amuser a faire du rap avec le
faire accelerer puis ralentir pour rien
Il siffle comme un vieux train
Enrhume jusqu'au ventre
心は擦り切れた45回転レコード
2フィートのドラマーだけが録音できた場所
意味もなく無理やりピッチを上げたり下げたりしてラップを楽しんだりする
古い電車のような口笛を吹く
腹までも風邪を引いてしまったよ
果たしてこれは何を言いたいのか?
いや、何を言いたいかなんてないだろう。
これを書くと荷に一体どんな景色、状況を考えていたか?
2フィート(およそ60センチ)のドラマーとはどんな人間なんだろう。
上述のとおり、レコードの速度の上げ下げは効果音で入っている。
リミックス版のPVでは、女4人男1人のグループ(Dionysosと正反対)と
Dionysosの映像が交互に出てきてこの曲を演奏している。
さて、最後の行のところは、古い電車の警笛のようにお腹を壊してしまった、と言っているのか。
勝手な推測で以下のような物語を思い浮かべた。
傷心気味の1人の男が(おそらく気だるい午後に)アパートの部屋で無為な空白の時間にいた。
中古のレコードプレイヤーで誰かに借りたラップのレコードをかけて気を紛らわしていた。
色んな音が出るので、楽しんでいた。
古い電車のような口笛の音が気に入ったので、ずーっと狂ったようにその音で遊んでいた。
心と同じようにレコードは磨り減ってしまってとてもひどいものになってしまった・・・。
眠たくなったので寝てしまおう。
明日は明日の風が吹く。
楽曲では、ralentir pour rien(無駄に・・・)と、切なく2度唱えた後、
Il siffle...のコーラス部に入っていく。
確実に哀愁の景色である。
PVでは、どこか田舎の、まるでエクスアンプロバンスのあの夏の駅のような場所で歌っていたのが印象深い。
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